戸田 怜 先生の論文がHepatology Research誌に掲載されました.

当教室員(現三菱京都病院)の戸田 怜 先生の論文がonline出版されました。Hepatol Res. 2022 Sep 23. doi: 10.1111/hepr.13842. Online ahead of print. PMID: 36149410

戸田先生おめでとうございます!

要旨
大腸癌肝転移に対するFOLFOX療法に代表される、オキサリプラチンを含む化学療法(OXCx)によって生じる薬剤性肝障害であるSinusoidal obstruction syndrome(SOS)は類洞の拡張、類洞内皮の障害を引き起こします。SOSを有する症例では、肝機能が悪化して根治手術が困難となる場合があり、また術後合併症が増加するとの報告も認めますが、ヒトSOSを再現した適切な動物モデルは未確立でしたが、本研究室では、ブタを用いることでFOLFOX誘導性SOS(OXCx-SOS)モデルを作成することに成功しました。本研究の目的は、幹細胞移植前の大量化学療法によって生じるSOS(SCT-SOS)を再現しているとされる、ラットにモノクロタリン(MCT)を投与することで起きるSOS(MCT-
SOS)モデルと、ヒトOXCx-SOS、そしてブタOXCx-SOSモデルを比較・検討することにあります。4つ全てのSOSで肝類洞内皮細胞の障害やMMP-9活性の上昇が生じており、SOS発症のメカニズムに共通すると考えられました。またヒト/ブタOXCx-SOSではICG-K値は低下しますが、腹水貯留や高ビリルビン血症を伴わず、SCT/MCT-SOSと対照的に発症は緩徐でした。これより、OXCx-SOSに特化した臨床診断と重症度分類の確立が必要であると考えられました。また、遺伝子組換え型ヒト可溶性トロンボモジュリンをブタOXCx-SOSモデルに使用し、ラットMCT-SOSモデルと同様に肝保護作用が得られることも確認しました。今回の研究は、SOS発症メカニズムの解明に貢献し、ひいてはSOSの発症予防につながるものであると考えられます。