教室コラム #1  教授より『新年のご挨拶と抱負』

新年あけましておめでとうございます。

昨年4月に着任し6ヶ月の兼任の期間を経て10月より専任となり3ヶ月が経ちました。

今年もよろしくお願い申し上げます。

 

年末に尊敬するS教授のブログを読んで感動し、私も僭越ながら始めたいと思っていました。

そして今回、元旦に目が覚めて布団のなかで思ったことを書き連ねたいと思います。

「ここに至る道程は決して平たんなものではありませんでした。」

「このような状況の中、精神的には苦しい毎日でした。」

「このような中で自分自身の心の平穏を保ち、自身のペースを守って目の前のことに集中することが大切ですが、わかっていても中々できることではありません。」

これは、前述のS教授のブログの一説です。私にもそのような時期は幾度となくあったように思います。

 

これまで、私自身一番辛かったのは、良かれと思って行った手術後の経過が思わしくない患者さんがいたときでした。

どうしたら良くなるのかを考えて人事を尽くしても状態が悪くなる。そんな状況でも手術を待つ患者さんがいる。朝5時台に家を出て、帰るのは終電で12時半ごろ。研究室への後輩のリクルートもうまくいかず、後輩が自分より先に昇進していく、などなど。

今だと、「患者さんのことは一人で抱え込まない」「人と比較しない」などアドバイスできますが、その時には思いつかず、落ち込むばかりでしたが、その時有難かったのは、今も仲良くさせていただいている先輩の存在です。

さらに、その後大学でのキャリアを継続できたのは、家族との時間、ライフワークバランスが改善したからだと思います。

子供たちは、ずっとバスケットボールやアメフトを学生時代やっていて、週末はよく応援に行ったものです。

家族もバスケットにハマって「日本一を目指すため」指導者を求めて宇治から奈良に転居したりしてました。

幸い、そこそこ強いチームでプレイしていたので、気持ちよく応援できて私自身のストレス発散になっていたのだと思います。

そんな仕事を忘れることできるオンオフの切り替えが良かったように思います。家族に感謝です。

 

ところで、先日発表された外科専攻医の応募状況によると、全国で891人(2021年)から784人(2022年一次募集)と10%以上も減少しています。

COVIDの影響とは考えにくく、外科の働き方が研修医には受け入れられないのが一番の原因かもしれないと危惧しています。

昨年の日本臨床外科学会総会の特別企画で講演された全国医師ユニオン代表の植山直人先生によると「外科希望者が少なくなっているのは,外科と言う職業が医学生に嫌われているためではなく,外科の労働環境(条件)が嫌われているため」との指摘がありました。

若い外科医が増えない状況は、我々には未来がない、というのと同じです。外科医の働き方改革は急務です。具体的には、タスクシフトとチーム医療の推進を挙げたいと思います。

さらに、女性医師が増えるに連れて、女性外科医を増やす工夫が必要で、結婚・出産・育児しながらでも外科医として働き続ける環境整備も必要です。

昨年着任以来、休日の登院制限、当直翌日の帰宅推奨、カンファレンスの時間変更など少しずつですが、改革しつつあります。

 

我々が率先して、ワークライフバランスを保ちつつ、イキイキとスマートに仕事している姿を学生や初期研修医に見せられるか?

今年は、京都大学外科の働き方改革元年にしたいと思います。

2022年1月5日 波多野悦朗