余語 覚匡先生の論文がCancer Science誌に掲載されました.

当教室 医員 余語 覚匡先生の論文が発表されました。

余語先生、おめでとうございます!

 

Yogo A, Masui T, Takaishi S, Masuo K, Chen R, Kasai Y, Nagai K, Anazawa T, Watanabe S, Sakamoto S, Watanabe A, Inagaki R, Nakagawa MM, Ogawa S, Seno H, Uemoto S, Hatano E. Inhibition of Dopamine Receptor D1 Signaling Promotes Human Bile Duct Cancer Progression via WNT signaling. Cancer Sci. 2022 Nov 28. doi: 10.1111/cas.15676. Epub ahead of print. PMID: 36441110.

要旨
一般に、一つの腫瘍塊中には異なる悪性度や細胞分化状態をもつ腫瘍細胞が混在しているとされ、その中で癌幹細胞は再発や転移の責任細胞集団であると考えられています。胆道癌は神経浸潤の頻度が高く、生命予後がいまだ不良な癌腫です。本論文では胆道癌が神経伝達物質の一つであるドパミンを自己合成するという既報からヒントを得て、胆道癌のCSCに対し自己合成ドパミンがどのように作用しているかを明らかにすることを目的としました。
市販胆道癌細胞株や、新たに当院の手術検体から樹立した患者由来癌オルガノイドを用いて、ドパミンD1受容体(DRD1)シグナルの阻害が腫瘍形成や化学療法抵抗性といった癌幹細胞様特性を促進させることを明らかにしました。さらにシングルセルRNA解析では、DRD1阻害によりドパミン反応性が高く胆管様表現型をもつ細胞集団においてWNT7Bの発現が亢進すると同時に、 Wnt受容体や癌幹細胞様の遺伝子発現をもつ別の細胞集団の増殖が促進されていたため、DRD1阻害下で発現亢進したWNT7Bによって癌幹細胞の増殖が誘導された可能性が示唆されました。
以上のことは胆道癌が自己合成ドパミン量に応じて癌幹細胞の増殖を自己調節しうることを示唆しており、この機構を利用して新たな治療戦略が展開できる可能性があると考えます。
また、先だって関連論文も余語先生が共同第一著者で発表しています。

Watanabe S, Yogo A, Otsubo T, Umehara H, Oishi J, Kodo T, Masui T, Takaishi S, Seno H, Uemoto S, Hatano E. Establishment of patient-derived organoids and a characterization-based drug discovery platform for treatment of pancreatic cancer. BMC Cancer. 2022 May 3;22(1):489. doi: 10.1186/s12885-022-09619-9. PMID: 35505283; PMCID: PMC9063137.

要旨
膵癌は予後不良な癌腫です。本論文では当院の手術検体から患者由来膵癌オルガノイドを複数樹立しました。これを用いて薬剤スクリーニングプラットフォームを確立し、ゲムシタビン耐性異種移植モデルの腫瘍成長を抑制するのに有効な化合物が同定されました。
本研究は京都大学メディカルイノベーションセンター産学連携DSKプロジェクトの一環として、住友ファーマ(旧大日本住友製薬)様との共同研究で行われました。