教室コラム#12 「「生まれ変わっても外科医になりたい?-先達からの学び-」が公開されました。
先日12月2日、2023年度冬季研究会に引き続き、4年ぶりに京都大学外科同門会が開催された。波多野悦朗教授からの「生まれ変わっても外科医になりたいか?」という問いかけに対して、おそらく出席者全員が手を挙げたのではないだろうか。私がリーダーを務める臨床グループ(内田グループ)のメンバーであった小山幸法先生がこの1月より異動となった。年末に開いた送別会で、「生まれ変わってもやっぱ外科医でしょ!」とビール片手に語った彼の顔が今でも忘れられない。今月号(第125巻第2号)の日本外科学会雑誌の “先達に聞く” 特集も、是非とも一読いただきたい。やはり外科医は生まれ変わっても外科医になりたいのである。その理由は何か、外科医にしかわからないのかもしれない。
私は、新大学院生に対する毎年の研究室紹介で、“Academic Surgeon”を目指す大切さを伝えている。臨床も研究もするいわば二刀流の外科医である。二刀流と言えば、日本が誇るメジャーリーガー大谷翔平選手が思い浮かび、我々親世代としては息子にしたい理想像であろう。二刀流と言うと格好よいが、外科医の二刀流は、理想というより大変さのイメージしかないようにも思う。私が駆け出しの研修医の時に、脳外科の父と呼ばれたHarvey W. Cushing先生が提唱され残されたAcademic Surgeonという言葉を教わり、深く感銘を受けたことを今でも覚えている。私もAcademic Surgeonになりたい、と心に決めた。それは、「常に研究マインドをもち、良き先輩・指導者、良きリーダーであり続け、当然ながら良き術者として最善の責務を果たし、協力的であり、理想的な社会人そして家庭人である外科医」を指す。25年経った今を振り返ってみても、残念ながらまだまだ発展途上と言わざるを得ない。特にこの良き家庭人は、外科医の労働環境を考えるとハードルがとても高く、どうしたらAcademic Surgeonになれるのだろうか。私なりに考えるAcademic Surgeonとは、バランスの取れた外科医、バランス感覚のある外科医ではないかと最近つくづく思うようになった。
いよいよ来月4月から医師の働き方改革が本格始動となる。自らの働く環境の見直しだけでなく、意識改革することが必要であり、これは大学病院だけの問題ではない。今年1月発行の日本外科学会雑誌(第125巻第1号)において、私が『会員のための企画』の前文を担当し、「臨床研修病院における外科医の働き方改革」について北野病院の寺嶋宏明先生に執筆いただき、その中でタスクシェア・シフトの重要性が述べられていた。大学病院においても、外科医の業務軽減に向けたタスクシェア・シフトを是非とも広げていただきたい。ワークライフバランス、多様性そして柔軟性を重んじる“New Academic Surgeon”へとシフトすることが、次世代の外科医のリクルートや育成につながっていくのだろう。これからもAcademic Surgeonを目指して歩み続けたい。
「継続は力なり!」
2024年3月11日 内田 洋一朗