教室コラム#9『ロジャー・フェデラー氏の現役引退に思う』を公開しました
当科助教 楊 知明先生による、教室コラムを公開しました。
先日、私の尊敬するアスリート・テニスプレーヤーの一人であるロジャー・フェデラー氏が現役を引退した。彼はプレースタイルのエレガンスさだけでなく、紳士的なコート内外での立ち居振る舞いが知られている。私は2018年にフランスへ留学していたのだが、ロレックス・パリ・マスターズで生のフェデラー氏を生で見た。それだけにフェデラー氏には勝手に深い思いを抱いている。今回は、彼から学んだ「感情コントロール」・「Positive Thinker」について思うところを書きたい。
#「感情コントロール」
前述の紳士的立居振る舞いに加え、フェデラー氏といえば感情コントロールの克服でも有名である。彼も若い頃は試合中に癇癪を起こし、ラケットを破壊するなど今の姿からは想像できないような一面を持っていた。しかし、キャリアを重ねるごとに、彼は感情コントロールの克服に成功し、その振る舞いも次第に紳士的になった。感情のコントロールが彼の強さの秘訣となったことは言うまでもない。
仕事においては“感情コントール“はKeyとなる(=アンガーマネージメント)。 私達外科医においては、それは手術時に顕著に現れる。手術の難易度や、コミュニケーションエラーなど、様々な要因により感情コントロールが時に難しくなるのは事実である。しかし、感情コントールが出来ないと雰囲気が悪くなり、周囲のモチベーションも低下し、最終的には仕事の質が下がる。私は、自分が手術の中心メンバーとして、手術をコントロールする時期を過ごさせていただいた経験がある。その時に恥ずかしげながら、この感情コントールの重要性を痛感した。チームとしていかに上手に人に動いてもらうか、若手から中堅へのステップを踏んでいる私には重要課題であり、感情コントロールは一つのKeyと思う。
#「Positive Thinker」
フェデラー氏にはいわゆる“名言“はいくつもある。その中で彼は「Positive Thinker」であったことがその成功の秘訣と語っている。
“I’m a very positive thinker, and I think that is what helps me the most in difficult moments.”
訳:私は物事をポジティブに考える。そのおかげで困難な状況でもやってこれた。
その一方で、
“There is no way around the hard work, embrace it.” / “The details make the difference in the end.”
訳:努力に逃げ道はない、努力を愛しなさい。/ 小さな事が結果につながる。
という言葉も残している。
この3つの言葉はリンクしているように思う。小さな積み重ね=継続した努力であり、それに支えられて物事をポジティブに考えられる。この3つは決して簡単な事ではないが、Positive Thinkerは周囲をHappyにすると思う。私自身割とPositive Thinker(もしかしたらOptimist?[楽観主義者]) だとは思っているが、どうだろう。最近、直接大学院生を指導することも増えてきたし、学会でのプロジェクトに参加する機会もいただいた。 私自身、「Positive Thinker」の指導医の先生方に恵まれ、学位取得や留学など一つの目標を達成することが出来た。自分も確固たる「Positive Thinker」になり、後輩に還元したい。そしてその先に明るい未来を作る事ができるか、これも課題である。
最後に、私が自身の使命の一つと考えていることに若手のリクルートがある。外科医は減少中なのは波多野教授の教室コラム#1を参照いただきたい。「感情のコントロール」・「Positive Thinker」は若手のリクルートにも手助けになるのではないだろうか。術中に感情のコントロールが出来ない外科医・グチばかりこぼす外科医を見て、果たして研修医は外科医になりたがるだろうか。特にリクルート世代のUnder 40のドクターには少しでも思い当たるところがあれば是非振り返って欲しい。
フェデラー氏の現役引退に際して、「感情のコントロール」・「Positive Thinker」をキーワードに思うところを書いてみた。以上、若手(?)からのコラムということでH20年卒 楊 知明が担当させていただきました。
画像:2018年 ロレックス・パリ・マスターズでのフェデラー氏
9月16日 楊 知明